大嫌い


大嫌い



代わり映えのない時間だった。
3人で休みを取って遊びに出かけて。
収集が掛かれば、飛んでいった。
そう。いつもと変わらない時間だった。


「いいなぁ。TOKIO様」
チスイスイがそう小さくぼやいた。
スターセイバーは意外だと言った表情でチスイスイを見た。
「へぇ。お前も海に入りたいんだ」
スターセイバーの言葉にチスイスイはこっくりと頷いた。
「TOKIO様のお相手もしてあげられるしなぁ」
「本当にお前はTOKIO様好きだな」
スターセイバーが苦笑した。
「お前もそうだろ?」
チスイスイが顔も向けずにそう問う。
スターセイバーはチスイスイを見据えて、
「ああ、そうだった」
とやる気のない答えを返した。


「じゃ、お前。オレはどう?」
「は」
スターセイバーが胸をトントンと叩きながら繰り返した。
「オレ。好き?嫌い?」
チスイスイは顔を顰めた。
「何聞いてんだよ」
「いや、別に」
スターセイバーが視線を海へと移す。
「そうだな。好きか嫌いかと言われたら、大ッ嫌いだ」
チスイスイが言うと、スターセイバーは不服そうな顔をした。
「手前…」
スターセイバーが抗議の声を上げる前に、チスイスイが言った。


「だって、お前、死ぬじゃん」


あんまりにもあっさりと言われたため、スターセイバーも流しかけた。
が、ふとその言葉を脳が受け入れて、反応を起こした。
「何言ってんだよ」
チスイスイは片眉を吊り上げて、笑っているかのような表情で言う。
「お前だけじゃないか、TOKIO様も。」


「確実に、オレより先に死ぬだろ?」
「そうとは限らない」


スターセイバーの言葉にチスイスイは首を振った。
丁度、宇治金時がこちらへ向かって走って来ているのが見えた。
「何て言うのか。許せないって訳じゃないんだよ。」
スターセイバーは黙って聞いていた。
「死なれるのが怖い訳じゃない。そんな事言ってたらこんな仕事出来ない訳だし」
チスイスイがにっこりと笑顔で手を振った。
視線の先には宇治金時がいた。
「なんだろうな。本当に。」

チスイスイがため息を漏らした。
スターセイバーは手元にあった小さな貝殻を拾った。
白い貝には小さな丸い穴が開いていた。
「じゃ、オレが確実にお前より長生きするって解れば嫌いじゃなくなるのか?」
チスイスイは苦笑した。
「オレはお前のそういう所も嫌いなんだけどな」
白い貝を投げ捨てた。
人類には考えられないほどのlowスピードで行われた殺人の痕。
食われてしまった貝に、何の価値があるのだろうか。


「いなくなるからか?」
「誰が」
「オレが、死んだら。」
「それもあるかもな。寂しいんだ、きっと。」
チスイスイが濡れた砂浜を見た。
スターセイバーは目を逸らした。
「もう一度聞こうか。」
「何を」

スターセイバーは小さな笑みを浮かべて問う。

「オレの事は好き?嫌い?」

チスイスイが悩む振りをした。


「そうだな、どちらかといえば、大嫌いだ。」
「なんだ、結論は同じか」
スターセイバーが苦笑交じりにそう言った。
チスイスイは軽く頭を振る。
「いや、少しだけ、よくなった。」









必要なのは、ほんの少しの思い出でいい。



















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後記

最初はちょっと痛い話にしようと思ったんですけど、結局何事もなかったかのように。
恋愛感情のない「仲間」であるただそれだけの関係の3人も好き。

嫌いと面と向かっていっても、すんなりスルー出来る関係。
ちょっとした憧れ。