lost you


lost you



失くした、ワタシ。
失くしてないって意地張って。
何でもない風に装って、気づいてない振りして。
でもさ、もう。


「百狂様、メスです」
今日も、昨日も、明日も。
メスを渡す相手は変わらない。
メスを渡す感覚も、変わらないのかもしれない。
だけど。
「あれぇー?もうお終いでちゅか〜?」
純粋無垢。子供の笑みを浮かべて真っ赤に染まった、敵を見つめる百狂を。
ナイチンガールは見ていた。無感情の無表情。
口の端には薄い笑みを引いた。
「あーあー。手前等もっと百狂様のお相手をしろよ。使えねぇ塵が」
手は腰にあてた。腕に常備しているメスが、煌いた。

「っ…!」

ナイチンガールは口を両手で押さえた。
百狂はナイチンガールを見て、面倒くさそうに頷いた。
ぽろぽろと涙を流しながらナイチンガールが走り去った。


それは全てを取り戻す瞬間。
中に在ったモノが全て表に現れる瞬間。


キモチワルイキモチワルイキモチワルイキモチワルイキモチワルイ


脳に付いて離れない光景。
全てを切り落とされて、尚動く人影。
呻きとも言えぬ呻き声。
生暖かい、ぬるっとした感触が足首を伝って。
下をみやれば…。

「ァァアアア…ッア ぐぃ…ゥア…」
呻き声は共鳴して、戦場を支配する。
血で、前がまともに見れていないだろう。
なのに。
「ひっ…」
瞳は真っ直ぐこちらを見ているようで。全てを見透かそうとしているかのようで。
「ヤメロ!…は、離れろ」
足を振り回して、足に絡み付いた人影を振り払う。


それは、全てを見た瞬間。
中に、全てが入り込んでくるような感覚を覚えた瞬間。


「ナイチンガール?」
「…ッぁは…、LOVE様…」
胃液独特の匂いが充満していた。
ビシャビシャと水道からは水が惜しみなく流れていて。
「なぁに?また?」
LOVEが呆れた声を出す。
ナイチンガールは体を小さくした。

嗚呼、また足手纏いだと。

「そんなに辛いなら、違う所に配属してもらえば?
 そうね。私の所なんてどう?歓迎するわよv」
言ってウィンクをひとつ。
ナイチンガールは嬉しそうな顔をしたが、それも一瞬だった。
「でも、私は百狂様と共に戦いたい」
悲しそうに頭を垂らして、自嘲気味の口調。
LOVEはただ、息を吐いてナイチンガールの頭を撫でた。
「そうね。アナタは百狂様のメス係だものね」



気持ちが悪い。
慣れてしまえば楽なんだろうケド。
どうしても、どうしても慣れない。


それを受け入れた時。
それが、失う時。
気づかない振りして、意地張って。
失くしていくんだ。


『血に染まれ。貴様が生き延びるなんぞ認められん』
『莫迦な人。手前みたいなのがいるから百狂様が手術しないといけなくなるんだろーが』
『その白い服を即刻赤く染めてやろうか、貴様の血で』
『身の程をわきまえろよ莫迦』


全部、全部。
失くしてく。
受け入れるためには。
全部全部、失くさないと。
私が在る為に。


















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後記

実は戦闘後、ナイチンガールは血の匂いとか。
そういう生臭さに耐え切れず吐いてたりしてたら萌える。
と言うお話。


ナイチンガールは誰と絡ませたら良いのか。
よくわからない…凹