存在を否定する言葉



存在を否定する言葉



風が吹いた。
ソレは、優しいような。
寂しいような。
風が、吹いた。


クスクスクス。

風が吹いた。
風に乗って、笑い声が聞こえた。
その声に不快感を覚えて、ビュティが風が流れた方向を見た。
「どうした?ビュティ」
ボーボボが心配そうに尋ねてきた。
その様子がお母さんに怒られる事に怯えている子供みたいで。
「何でもないよっ」
ビュティは笑った。


「キレイだね。」
「キタナイね。」
「クスクスクス。」
「ドッチなのかな」

耳について離れない言葉。
その声は、何処で聞いたものだったんだろう。
ビュティは、三度風に混じる声を聞いて、首を傾げていた。
空耳にしては。

よく聞こえすぎて。

幻聴にしては。

はっきりとしすぎて。

「キレイだね。」

今度は。
後ろから聞こえた。
風に乗って、土の匂いもする。
「誰」
ビュティは問う。
答えは出ていたのかもしれないけど。
「誰だと思う?」
彼はあくまで彼女の口で言わせたいようだった。

「ジェダ…さん?」

その名を口にすると。
風が踊った。一瞬の強い風。
「正解。」
気が付けば、目の前に移動していた。
「キタナイね。」
ジェダがビュティの胸を指してそう言った。
ビュティは自分の胸を見たが。
何も無い。
「何がですか」
キッと睨まれて。ジェダはやれやれと言った風に肩を竦めた。
「ココロ。」

「知ってたんだろ?オレだってことさぁ?」
灰色の髪が風に靡く。
彼の周りだけ風が吹き続けている。
「いいえ」
ビュティがそう応えると、ジェダは柔らかく首を横に振る。
「ううん。知ってたよね。ビュティ?」
クスクスと笑いながら言う。

不快感。
「貴方に…」
何が解ると言うんですか。
そう続く言葉は出なかった。
否。発したはずだったが、音になっていなかった。
真空状態だったように。
「ドッチなのかな。」
ジェダは品定めをするようにビュティの顔を覗き込んだ。
ビュティは、その視線が痛くて顔を逸らした。


「ビュティ!?」
ボーボボが走ってくる姿が見える。
「嗚呼、邪魔が入ってしまうねぇ」
無感動にそういうジェダは、微笑を浮かべているようだった。
「うん。じゃあ、仕様が無いねぇ。これじゃ」
ボーボボが走ってくる。
叫んでる。


「ま、ドッチにしたって君はキタナイんだろう?」

ジェダが、別れ際に言った言葉が、耳に残って離れない。
「大丈夫か?」
ボーボボがとても不安げな顔で尋ねてくるものだから。
ビュティはクスリと笑って言う。
「大丈夫だよ。」


風が吹いた。
ソレは、容易く全てを崩壊へ導いていった。
傷つけていった。
風が、吹いた。














*************************************
後記

風神さんの意図が解りません先生。(挙手

敢えてノーコメントの方向でお願いします先生。(起立