ひとつ



ひとつ



ひとつ。
ふたつではない。
たったのひとつ。



寝ると現れるもう一人の何か。
どうしても、ソイツが好きにはなれなかった。
つか、夢の中で話してると、寝てる気になれないし。
「またテメェか」
OVERは悪態ついた。
周りは暗闇。
ソイツのいる所と、自分のいる所は何故か明かりが灯ってる。
「口が悪いわね」
ソイツは光る身体を向き直し、こちらを見た。
眼力が並みのヤツと違う。
「教えろよ。」
「またアノ話?」
ソイツは肩を竦めて、大げさにため息をついた。
ソッチにとってはどうでもいいだろうけど。

コッチにとっては重要なんでね。
「私はアナタって言ったでしょ?」
「ソレが解らねェ」
二重人格ってヤツ?
でも、それは性格が変わるだけで、肉体まで変わること無いだろ。
「解らなくてもそうなの。」
「ケッ」


一つだ。
ただ、一つだ。



起きるとソイツはもういない。
当たり前の事だが。
ソイツは夢の中でしかあった事が無い。
「OVER様、お食事の用意が出来ましたが…」
「ああ、解った」
OVERは気だるげに返した。
いつも通りだ。
だが。
「お風邪でも召されましたか?」
こうだ。
戸の前で直立不動で控えている部下は不安げに聞いてきた。
「別に。先行ってろ。着替えていく」
「はい。」


一人だ。
「誰なんだ…」
コノ中にいるのは一人のはずだ。
「畜生…ッ」
一つの身体に二つの魂が。
ある筈が無い。



















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後記

OVER氏と先生。
OVERさんは先生の事を知らないんでしたよね…確か。
でも、どこかでやっぱり繋がりはあるんだろうなぁとか。

OVER様は色んな人に振り回されてるといい。

あ。文中の部下はお好きに。私的お勧めはおちょぼ口君(笑